2012年7月14日土曜日

ブログ連続ドラマ小説 『僕ら名青制度部員っ!』    第2話 社長が動いたっ!!

 重い思い、荷物も重ければ、肩の荷も重い。

 事務局の扉を前に僕は想う。
(あ~、せめてこのドアが六本木ヒルズに採用されているような微塵も作動音をさせないような自動ドアであれば、両手どころか八方がふさがったこの状況でも軽やかなステップを踏んで戦場へとINできるのに。)
 
 今思えば直属の上司である水野副社長からの一本の電話が始まりだった。
「濱田部長、今度の経営者会議出席してね!」
「は、はい。でもどうしてヒラ部長の僕がそんな会議に??」
「まあ、出れば分かるから。」と水野副社長。


 会議当日、百戦錬磨の面々を前にして緊張のあまり手が振るえんばかりの僕に、安藤社長は命を下された。


 「論点整理メモへの意見書を提出したいから、制度部で来週までにまとめてね!」


 私は異国の言葉を聞くかのように、たった今軽々と発せられた単語を噛み締める。
論点整理メモ?! 意見書??来週~っ!?
何じゃそりゃ~~、と寝耳に水の僕は軽く松田優作を心のなかで演じる。
それにしても最近、スギちゃん口調がお気に入りの安藤社長。その発言のワイルドぶりは本家をすでに凌駕している。


 そして僕達制度部の苦悩は幕を開けた。
「じゃあ今回の第3回の制度部会は、明日役員会に諮る論点整理メモに対する意見書を
完成させていきます。」
 私の力ない一言で始まった制度部会にもかかわらず、心強い制度部員達は前回の制度部会と同等、いやそれ以上の活発な意見を飛び交わせ、その勢いは僕に(世のハマちゃんは今頃何やってんだろう?釣りバカのハマちゃんは夜釣りかな?ガキの使いのハマちゃんは今夜も隣の坊主頭を叩きまくってるのかな?)と隣の芝は青く見える的な妄想をさせる余裕すら与える。


「部長っ!」
「えっ何?」と現実に引き戻された僕に、副部長が畳み掛ける。
「なにボーっとしてるんですか?もう時間もおしてるんでそろそろまとめてくださいよ!」
「あ、そうだね(汗)。それでは今日はお疲れ様でした。これだけ皆さんと喧々諤々の議論を重ねて完成した意見書なので、僕は自信をもって明日の役員会に提出したいと思います。」
と、本当にその時は思っていたんです。翌日の役員会での錚々たる論客達と顔を合わせるまでは(泣)・・。


作・制度部長 濱田和希